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法人保険が租税回避行為や行為計算否認か

8月 21st, 2015 Posted in 判例・裁決 | 法人保険が租税回避行為や行為計算否認か はコメントを受け付けていません。

平14.6.10裁決
(租税回避行為/定期保険保険料の損金算入) がん保険通達、定期保険通達に従って保険料を損金に算入した請求人の経理処理は公正妥当と認められる会計処理の基準に従ったものとはいえないとして同族会社の行為計算否認規定を適用した更正処分につき、その全部を取り消した事例

概要
養鶏業を営む同族会社である請求人は、生命保険会社4社とがん保険契約及び逓増定期保険契約を締結した。請求人は、がん保険契約の保険料及び逓増定期保険契約のうち、特約部分に係る生命保険料を平成9年12月期に159,498,876円、平成10年12月期に262,064,415円支払い、損金に算入し、逓増定期保険契約のうち、主契約部分に係る支払保険料は、保険積立金として資産計上した。
保険契約
・がん保険契約
保険契約者・・法人
被保険者・・役員及び従業員
死亡保険金等の受取人・・法人
保険期間・・終身
保険料の払込期間・・5年以上の有期
・逓増定期保険契約
保険契約者   法人
被保険者    役員及び従業員
死亡保険金等の受取人 法人
主契約部分については保険期間及び保険料の払込期間が終身、逓増定期保険特約部分については保険期間及び保険料の払込期間が14年ないし38年までの有期・本件がん保険契約に係る生命保険料は、本件がん保険通達に定める「その払込みの都度損金の額に算入することが認められる生命保険料」に該当する。・本件逓増定期保険契約のうち逓増定期保険特約部分に係る生命保険料は、平成8年7月4日付課法2-3「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて」通達(以下「本件逓増定期保険通達」という。)に定める前払保険料とすべき逓増定期保険に係る生命保険料には該当せず、本件定期保険通達に定める「期間の経過に応じて損金の額に算入することが認められる生命保険料」に該当する。
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原処分庁の主張 納税者の主張 審判所の判断
高額保険料がいけないかどうか 保険料の額が被保険者の年間給与額に比べて異常に高額である

・がん保険及び逓増定期保険に係る生命保険料の額を損金に算入する時期についての法人税の取扱は、本件各生命保険通達に明文の定めがあり、本件保険料は当該通達によりその全額が支払った事業年度の損金の額に算入することが認められているものである。さらに、本件各生命保険通達は公開された通達であり、実務社会では法令以上の機能を果たしおり、請求人がこれらを信頼し、同通達を適用したことに請求人の責めに帰すべき事由はない。・本件各生命保険契約は解約返戻金も含めて大蔵省(現金融庁)の認可を受けており、本件保険料は本件各生命保険通達で支払った事業年度でその全額を損金の額に算入することが認められているものでる。そので、結果的に平成9年12月期の解約払戻率が49.7%及び平成10年12月期の解約返戻率が52.3%であったということであり、解約を前提とする租税回避を目的としたものではない。

・解約返戻金については、解約を仮定しての返戻率を基にして計算されたものにすぎず、解約時に益金処理されて課税の対象となるものであることから、支払った年度のみの実質負担額と法人税とを単純に比較することには合理性がない。

本件保険料に係る経理処理は、上記イ及びロのとおり本件通達等の取扱いによったものであり、その結果として各事業年度の納付すべき法人税額が、本件各生命保険契約を締結しなかった場合と比較して減少することとなるとしても、これをもって不当な税負担の軽減に当たるということはできない。
税負担軽減目的ではいけないかどうか ・税務否認された場合の補償確認書の存在は税負担の軽減を目的としているものであること

・決算対策シミュレーションによれば、保険料の額から解約返戻金を差し引いた実質負担額が法人税等負担額より少なくなるよう設定されていること、

・本件保険料を支払った各事業年度においてその全額の損金算入を認めた場合には、損金の額に算入することを認めなかった場合と比べて法人税額を平成9年12月期で64,420,600円、平成10年12月期で98,068,300円減少させる結果となり、これは不当な税負担の軽減に当たる。

本件確認書は、請求人がその経理処理に確信を持つために税理士の丙に確認を求めたのに対して同人が税務の専門家として作成したものであり、決算対策のみの目的で作成されたものではない。

・本件保険料が高額であることから結果として法人税の税負担を減少させる結果となるが、これは「不当な税負担の軽減」ではない。

保険契約の締結に当たり、シミュレーションを行ったことについては、実質的な税負担や解約返戻金を検討することは、経営者としての経営判断の一つであると認められるから不当な税負担の軽減に当たるということはできない、
同族会社の行為計算の否認規定が使えるかどうか 請求人は同族会社であり、本件各生命保険契約は、締結する経済的合理性が認められず、結果として法人税負担を不当に減少することになることから、同族会社等の行為又は計算の否認の規定に該当する。 ・本件各生命保険契約の締結及び本件保険料の支払は、同族会社等特有の行為又は計算でもなく、一般に通常行われているものであり、不当に法人税の負担を減少させるものではないことから、同族会社の行為計算の否認の規定には該当しない。

・本件各生命保険契約の締結に伴う本件保険料の支払は借入れしてまでのものではなく、請求人の各事業年度の財務状態から見ても、決して不合理なものではない。

本件各生命保険契約の締結は、本件各生命保険会社との間で有効に成立した第三者取引であることから同族会社等特有の取引ではなく、請求人の法人税の負担を不当に減少せしめるものとも認められず、これらは法人税法第132条第1項の同族会社等の行為又は計算には該当しないとするのが相当である。
退職時に解約しない保険があってはいけないか? 一部被保険者が退職しているにもかかわらず、解約の手続を採っていないこと 本件被保険者の一部の者が退職しているにもかかわらず、解約の手続をとっていないことについては、途中解約のメリットがなく、解約しないほうがその間の保証もあることから解約しなかったものである。 一部の退職者につき年度中に解約の手続が採られていないことは、翌事業年度に解約手続を採る方が解約メリットが多いことから中途解約をしなかったものと推認されること
福利厚生費かどうか ・本件がん保険契約について、本件被保険者への周知が行われていない

・本件各生命保険契約の死亡保険金等の受取人はいずれも請求人であり、当該死亡保険金等を本件被保険者の退職金及び弔慰金等の原資に充てるなど福利厚生目 的に使用する旨の退職給与規定及び弔慰金規定等の定めはない。また、労働基準監督署に提出した就業規則にも従業員の退職金については中小企業退職金共済事 業団から従業員に直接支払われるとだけしか定められていない。

・請求人が事業年度初めに従業員等に提示した給与の額及び就業規則等の社内決定事項を記載した文書の中にも、本件各生命保険契約についてなんら具体的に記載されていない。

 

本件各生命保険契約は有効に成立しており、経理処理も適正に行われている ・本件各生命保険契約に関し、請求人の福利厚生制度規定に記載して周知している

・本件がん保険契約については、がん保険加入規定及び「正社員としての心得」に記載して周知し

・逓増定期保険契約については、各自の署名捺印を徴して周知していること、

 

本件被保険者には請求人の正式社員以外のパート従業員も含まれている
経理処理について がん保険については、がん保険通達に従って払込期間に応じて均等年払処理をしていること、